ガム vs マゾンナ

えりちゃん、
人生において意味がないことは過去をぐちぐちいうこと。人生とは、

昨日電車に乗っていたら横に座っていたオッサン(たぶん40代後半)が携帯でこんなメールを打っていた。人様のメールなんて見るつもりなかったけど、自分がちょっと下を向いたら見える位置で携帯いじってるんだもの。しかもこんな内容なんだもの。つい見ちゃうよね。


メールが途中で終わっているのは、書き途中でオッサンが下車したから。


「人生とは」の続きが気になるじゃねーかw
えりちゃんとの関係も気になるじゃねーかw


きっとえりちゃんとオッサンは不倫の関係にあたるんだな。そしてえりちゃんがオッサンの過去について嫉妬だか、なんだかしてんだよきっと。そんな安っぽいドラマを勝手に妄想しながら、私も電車を乗り換える。


で、乗り換えてからが最悪。


横に座っているオッサン(またしても40代後半ぐらい)が、今まで聞いたことないぐらいのボリュームで顎を休めることなくガムを「くちゃくちゃ」。こんな不愉快な音をたててガムを噛む人、初めて遭遇したよ。


とりあえず、様子見でしばらくはひたすら我慢。
でも、ガムを噛む音は鳴りやまない。


うぅぅっ。文句つけてやりたいけど、まずはこちらで努力して気持ちの切り替えを試みる。


この「くちゃくちゃ」はドープなミニマル音楽なんだと自分に説得。で、これは即興ライブなんだな。一定のリズムで刻まれる「くちゃくちゃ」と、電車の「ガタンゴトン」が重なっていく様はまるでテリー・ライリーのような美しさが・・・。


Terry Riley - A Rainbow in a curved air - 1969


この例え、ムリムリw
やっぱガムを噛む音が不愉快きわまりない。


で開き直って、これは常識を逸脱したノイズミュージックなんだと自分を洗脳させてみる。


Masonna - Live at Milk, Tokyo (1997)

駄目だ。こんな素敵なもんでもない。



オッサンの口から発するノイズを聞きながら、色んな音楽に置き換えては我慢してみたけれど、苛立ちが頂点に達した私は


「くちゃくちゃ、うっせーんだよ、あんた!」


なんて発言はもちろん出来ませんし、そんなことをストレートに言えるような漢であれば、人生を優雅に謳歌して暮らせていたかもしれない。小心者の私は、どんな注意の仕方をすれば和やかにこの迷惑なオッサンをなだめることができるのかといったシミュレーションを始める。

こういった時に相手を逆上させるような高圧的な言い方は避けるべきだろう。


「申し訳ないのですが、ガムの音が少し気になるんで・・・」
「気を悪くさせたら恐縮ですが、ガムの匂いが苦手で・・・」
「いい香りのガムですね。甘くて美味しいかとは思いますが、そんなに強く噛んだら顎が疲れませんか?」


もしくはハンムラビ法典に従い、自分も負けじとガムを「くちゃくちゃ」と爆音で噛みだす。


とかなんとか人生において、まったく意味をもたないシミュレーションをしてたら、ようやく地元の駅に到着。


さっさとiPodで音楽聴けば解決した問題なんですけどね。
なんかオッサンのノイズに屈服したくなかったから、私なりにささやかな抵抗をしてみたんです。